「人を育てたい」
「社員にもっと力を発揮してほしい」
「組織として、もう少しまとまって動けるようにしたい」
中小企業の経営者の方から、このようなご相談を受けることがあります。
そのときに大切なのは、個人の能力だけを見るのでもなく、制度や仕組みだけを整えるのでもなく、組織全体をいくつかの視点から見ていくことです。
人材育成は大切です。
人事制度や評価制度も、会社にとって必要な仕組みです。
ただ、それだけで組織が自然によくなるかというと、現実にはそう簡単ではありません。
この記事では、中小企業の組織づくりを考えるうえで大切な「人材力」「組織力」「関係力」という3つの視点を整理します。
人を育てること、制度を整えること、関係性をつくることを別々に考えるのではなく、組織としてどうつなげていくか。
組織づくりを、少し具体的に考えるきっかけにしていただければと思います。
1.組織づくりは、人材力・組織力・関係力で考える
組織づくりという言葉は、とても広い意味で使われます。
研修をすること、会議を改善すること、コミュニケーションをよくすること、評価制度を整えること。
どれも組織づくりに関係していますが、どれか一つだけで十分というわけではありません。
私が組織づくりを考えるときに大切にしている視点のひとつに、
人材力
組織力
関係力
という3つの力があります。
人材力とは、一人ひとりの思考や行動の傾向、強み、持ち味、成長可能性のようなものです。
どのようなことが得意なのか。
どのような場面で力を発揮しやすいのか。
逆に、どのような場面で力を発揮しにくいのか。
まずは、人をよく見ることが出発点になります。
ただし、人の強みを見るだけでは、組織は動きません。
そこで必要になるのが、組織力です。
組織力とは、会社の目的、目標、役割、ルール、仕組み、判断基準などです。
会社がどこを目指しているのか。
そのために、誰がどの役割を担うのか。
何を基準に判断し、どのように仕事を進めるのか。
こうした構造が曖昧なままだと、一人ひとりが頑張っていても、力の向きがそろいにくくなります。
そして、もう一つ大切なのが関係力です。
関係力とは、単に仲がよいということではありません。
必要な情報を共有できること。
言いにくいことも扱えること。
相手の立場を理解しながら、仕事を前に進められること。
つまり、双方向のコミュニケーションが成り立っているかどうかです。
人材力、組織力、関係力
この3つが別々に存在しているのではなく、互いに影響しながら回っていくことで、組織は少しずつ動き出します。
2.人事制度は大切だが、それだけでは組織は変わらない
ここで、人事評価制度との関係についても少し触れておきたいと思います。
人事制度や評価制度は、会社にとってとても大切な仕組みです。
処遇を決める。
社員に期待する役割を伝える。
成果や行動を確認する。
人件費や不合理な待遇差への対応を考える。
こうした意味で、人事制度は欠かせないものです。
ただ、人事制度を作れば、それだけで組織がよくなるわけではありません。
制度は、あくまで仕組みです。
仕組みを整えたとしても、現場での仕事の進め方や、上司と部下の関わり方、部署間の連携が以前のままであれば、組織の動き方は大きく変わりません。
たとえば、評価項目を整えたとしても、日常の仕事の中で何を期待しているのかが伝わっていなければ、社員はどう動けばよいのか分かりにくくなります。
目標を設定しても、途中で振り返る機会がなければ、経験から学ぶことが難しくなります。
上司が評価をしても、その評価が次の成長につながる対話になっていなければ、制度は単なる点数付けになってしまいます。
つまり、制度を作ることと、組織が育つことは同じではありません。
制度を活かすためには、人材力、組織力、関係力の3つを意識しながら運用していく必要があります。
誰に、どのような役割を期待するのか。
その人の強みをどこで活かすのか。
どのような場で振り返り、次の行動につなげるのか。
上司と部下、部署同士がどのように関わるのか。
ここまでつながって初めて、人事制度は組織づくりの手段として機能し始めます。
人事制度は必要です。
ただし、それだけで組織が変わると考えるよりも、組織をよりよく動かすための一つの仕組みとして位置づける方が、現実的だと思います。
3.個の力を活かすには、組織の中でどう活かすかを見る
「人を活かす」という言葉は、よく使われます。
しかし、実際の現場では、これがなかなか難しいものです。
能力のある人を採用すれば、すぐに成果が出る。
強みのある人を配置すれば、組織が自然に活性化する。
そう考えたくなることもあります。
けれども、現実には、ある部署で力を発揮していた人が、別の部署では思うように力を出せないことがあります。
素晴らしい経歴を持つ人が、自社の組織にはなかなか合わないこともあります。
これは、その人に力がないということではありません。
大切なのは、「その人をどう活かすか」だけではなく、「この組織でどう活かすか」という視点です。
スポーツでも、優れた選手だけを集めれば必ず勝てるわけではありません。
得点する人、つなぐ人、守る人、流れを読む人。
それぞれの役割がかみ合って初めて、チームとして力を発揮します。
仕事の組織も同じです。
個の力は大切です。
一人ひとりの強みや持ち味を見ていくことは、組織づくりの出発点になります。
ただ、その強みを、会社の目的や役割、他の社員との関係の中でどう活かすか。
ここまで考えなければ、個の力は組織の力にはつながりにくくなります。
人手不足の中で、今いる人材に成長してもらうことは、どの会社にとっても大きなテーマです。
そのためには、仕事を任せ、経験してもらい、振り返る機会をつくることも必要です。
しかし、それを現場の上司だけに任せきりにしてしまうと、上司に大きな負担がかかります。
だからこそ、会社として、どのような組織を目指すのかを示すこと。
そのうえで、一人ひとりの力をどの役割で活かすのかを考えること。
そして、上司と部下、部署同士が関わりながら学べる場をつくること。
このような積み重ねが、組織づくりにつながっていきます。
組織作りで大切なこと
組織づくりは、何か一つの施策で完結するものではありません。
人を育てることも大切です。
人事制度や評価制度を整えることも大切です。
コミュニケーションをよくすることも大切です。
ただし、それぞれを別々に行うだけでは、組織全体の変化にはつながりにくいことがあります。
大切なのは、人材力、組織力、関係力をつなげて考えることです。
一人ひとりの強みや成長可能性を見る。
会社の目的や役割、仕組みを整える。
双方向のコミュニケーションを通じて、関係性を育てる。
この3つが回り始めることで、組織は少しずつ自分たちで考え、動ける状態に近づいていきます。
中小企業の組織づくりでは、他社の成功事例をそのまま当てはめるよりも、まず自社の状態を丁寧に見ることが大切です。
今の会社では、人材力、組織力、関係力のどこに詰まりがあるのか。
どこから整えると、組織が動きやすくなるのか。
そこを見立てることから、組織づくりは始まるのだと思います。
組織づくりとは、人を育てることだけでも、制度を作ることだけでもありません。
一人ひとりの力を見ながら、会社の目的や役割を整え、関係性の中で力を発揮できる状態をつくっていくことです。
人材力・組織力・関係力という3つの視点を持つことで、自社の組織づくりで何を見直すべきかが少し見えやすくなります。



