人事評価制度を運用していると、「評価者によって見方が違う」「評価がブレる」という悩みが出てくることがあります。
評価項目や基準を整えても、実際に評価するのは人です。どうしても、その人の見方や印象、これまでの関係性が評価に影響します。
また、管理職の中には、部下を評価すること自体に抵抗を感じている方もいます。評価の仕方が分からないという技術的な問題だけでなく、「自分ひとりで部下の評価を決めることが重い」と感じているケースもあります。
このページでは、評価者のブレや負担にどう向き合うかについて、次の3つの視点で整理していきます。
- 評価は「事実」と「人柄」を分けて見る必要がある
- 上司の評価を、複数の視点で支える仕組みが必要である
- 評価決定会議は、社員の成長を考える場である
1.評価は「事実」と「人柄」を分けて見る必要がある
まず押さえておきたいのは、評価者が部下を見るとき、必ずしも行動そのものだけを見ているわけではないという点です。
人はどうしても、相手の行動よりも先に、その人の印象や人柄を見てしまいます。特に勤務態度や協調性といった評価項目は、事実ではなく印象で評価されやすい部分です。
一度の印象で「そういう人」と見てしまう
たとえば、一度大きなミスをした社員に対して、「この人は確認が甘い人だ」と見てしまうことがあります。
もちろん、確認不足という事実はあるかもしれません。
ただ、それが一度のことなのか、繰り返されていることなのか。どのような状況で起きたのか。本人にどのような意識があったのか。
そこを見ないまま、「そういう人だ」と決めてしまうと、評価は事実から少しずつ離れていきます。
これは評価者が悪いというよりも、人が人を見る以上、起こりやすいことだと思います。
主観は消せないが、薄めることはできる
評価に主観が入ることを完全になくすのは難しいです。
だからこそ大切なのは、主観をなくそうとすることではなく、主観の偏りを薄める仕組みを持つことです。
一人の上司だけで判断すると、その人の見方に評価が引っ張られることがあります。
しかし、複数の評価者が集まり、「それは事実として確認できているのか」「ほかの部署の同じ等級の社員と比べてどうか」と話し合うことで、少しずつ見方が整っていきます。
ここに評価決定会議の意味があります。
2.上司の評価を、複数の視点で支える仕組みが必要である
次に考えたいのは、評価者の負担です。
評価する側の上司も、決して気楽に評価しているわけではありません。むしろ、部下を評価することに抵抗を感じている管理職は少なくありません。
「評価したくない」には理由がある
部下を評価したくないという気持ちには、いくつかの理由があります。
何を評価すればよいのか分からない。
評価に自信がない。
部下の処遇に影響することへの責任が重い。
評価そのものに、あまり良い印象を持っていない。
こうした気持ちは、単に管理職としての自覚が足りないという話では片づけられません。
特に中小企業では、プレイングマネージャーとして自分の仕事も抱えながら、部下育成や評価も担っていることが多いものです。
その中で、「自分ひとりで部下の評価を決める」となると、負担を感じるのは自然なことでもあります。
上司の判断を否定するための会議ではない
ここで必要になるのは、上司の評価を否定する仕組みではありません。
むしろ、日頃から部下を見ている上司の評価を大切にしながら、他の評価者の視点も交えて確認する仕組みです。
一次評価は、直属の上司が行います。そのうえで評価決定会議の場で、他の評価者から「この行動はどう見ているのか」「同じ等級の社員と比べてどうか」といった視点を投げかけます。
その対話を通じて、上司自身が気づき、必要があれば評価を見直す。
大切なのは、評価が会議で一方的にひっくり返されることではありません。上司自身が納得して、部下に説明できる状態になることです。
最後に部下へ評価を伝えるのは、やはり上司です。
だからこそ、上司が自分の言葉で説明できることが、とても大切になります。
ここまで読んで、「評価決定会議を開く時間が本当に取れるのか」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。
確かに、忙しい中で評価者が集まる時間をつくるのは簡単ではありません。けれども、評価決定会議を単なる点数合わせの場と考えると、その時間は重く感じられます。
3.評価決定会議は、社員の成長を考える場である
最後にお伝えしたいのは、評価決定会議の目的です。
評価決定会議は、点数を決めるためだけの場ではありません。本来は、社員の現在地を確認し、これからどう成長してもらうかを考える場です。
評価は処遇決定だけが目的ではない
評価というと、点数をつけることや、賞与・昇給を決めることに意識が向きがちです。
もちろん、評価が処遇につながることはあります。
ただ、評価の目的をそこだけに置いてしまうと、評価者にとっても被評価者にとっても、重く、苦しいものになってしまいます。
評価は、部下の現在地を確認するためのものです。
今どこまでできているのか。
何が足りないのか。
次にどのような成長が必要なのか。
それを確認し、本人に伝えることが、評価の大切な役割です。
会議で基準を整え、上司が部下に伝える
評価決定会議で話し合うことで、評価者同士の基準は少しずつ揃っていきます。
同じ行動を見ても、部署や上司によって受け止め方が違うことがあります。その違いをそのままにせず、話し合いながら基準を整えていくことが、評価制度の運用では欠かせません。
そのうえで、上司にはもう一つ大きな役割があります。
それは、決定した評価を部下に伝え、納得につなげることです。
「なぜこの評価なのか」
「これから何を伸ばせばよいのか」
「会社としてどのような成長を期待しているのか」
そこまで伝えられて初めて、評価は社員の成長につながります。
評価決定会議は、上司から評価する責任を取り上げる場ではありません。
上司が一人で抱え込まず、複数の視点を受け取りながら、より納得して部下に向き合うための場だと考えています。
評価がブレることや、評価者が負担を感じることは、制度運用の中で起こりやすい課題です。
だからこそ、次の3つの視点が重要になります。
- 評価は「事実」と「人柄」を分けて見る必要がある
- 上司の評価を、複数の視点で支える仕組みが必要である
- 評価決定会議は、社員の成長を考える場である
人事評価制度は、評価シートを作っただけでは機能しません。
評価する人が、何を見て、どのように判断し、どう部下に伝えるのか。そこまで含めて整えていく必要があります。
評価者のブレを責めるのではなく、ブレが起こる前提に立って、複数の視点で確認し合う仕組みをつくること。
そして、評価を処遇決定だけでなく、社員の成長を考える機会として位置づけること。
この視点があると、評価決定会議は単なる会議ではなく、組織として人を育てるための大切な場になっていきます。
評価制度の運用に悩むときほど、「誰が正しい評価をするか」ではなく、「上司が納得して部下に伝えられる評価になっているか」という視点で見直してみることが大切です。



