人事評価制度をそろそろ作らなければ、と思っても、社員に受け入れられなかったらどうしよう、とか、そもそも上手く作れるだろうか、という不安がよぎって、なかなか最初の一歩を踏み出せないかもしれません。
このページでは、人事評価制度作りで失敗しないために、押さえておきたい3つのポイントを解説していきます。
ぜひ、貴社の人事評価制度の策定の際にお役立てください。
- ビジョンとつながる評価制度
- 公平で納得できる評価制度
- 評価制度は完璧に作り上げない
1.ビジョンとつながる評価制度
いまこのページを読んでいただいている方は、会社の代表者の方でしょうか、それとも人事の担当者の方でしょうか。もしかしたら「うちの会社にも人事評価制度が必要だ!」と気合いを入れて読まれているかもしれませんが、人事評価制度は「さぁ作ろう!」と言ってすぐに評価項目を選び出すのは早計です。その前にやることがあります。
自社のビジョンの明確化です。
自社ビジョンの明確化
どうして作成前にビジョンの明確化が必要なのでしょう。それは、「ビジョンを具体的にしたものが評価基準」だからです。
小規模の会社や、評価をこれまで社長ひとりで決定している場合、評価制度を作ることは“こうあってほしい社員像”を具体化したもの、ということでもあります。
ビジョンが社員にも共有されていれば、上司による評価は、ビジョンの線上にあるかどうかを考えて判断することです。
評価制度は運用開始から3年かけて定着
評価制度は運用開始からだいたい3年程度かけて定着するものです。
そう考えると、評価シートで実現するビジョンは3年程度先を指していることになります。つまり、3年後のビジョンを見据えてその状況で活躍してもらう評価項目を選定する必要があります。
具体的には、あらかじめ、現状の組織図と3年後の組織図を書き並べてみる等の作業で進めていくことになります。
2.公平で納得できる評価制度
次に押さえておきたいのは、評価制度の「公平さ」と「納得感」です。どういうことなのか、こちらも具体的に見ていきましょう。
まず、評価制度における公平とは、どういうものでしょうか。
評価制度の公平性
評価制度における公平とは、事前に評価される側の社員の方に
- 何で評価されるのか
- どういうところを見て判断されるのか
これが可視化され、共有されているということです。
ただ、公平の意味には。主観を交えないこと、というのがありますが、客観的な評価はできるのかというとそれは難しいと言わざるを得ません。
いわゆる評価者エラーをなくすために評価者研修が行われていますが、いまだに、こうすれば人は客観的に評価できる、という確かな答えは出ていません。
評価者が客観的に評価することは無理です。
つまり“誰にとっても”まったく同等に評価するのは無理なのです。そこで、目指すところは、納得性です。納得することで不平不満はなくなります。
評価制度の納得性
評価制度に納得してもらうために、まず作成段階では「説明できる評価制度」を目指します。
以下の内容が人事制度の設計に入っていることが、社員に説明できるように作っていると言えますので、評価制度の納得性では以下3つのポイントを検討してみましょう。
評価プロセスの透明性-手続きの公正
- 評価基準が事前に開示されている
- 対象者に対して同じルールが適用される
結果の妥当性
- 同じ成果には同じ評価が与えられる
※報酬については、部署によって差をつける場合があります。 - 努力や貢献度合いが正当に報われる
対話と信頼-関係性による公正
- 評価される側が納得できる
- フィードバックの機会が設けられている
- 評価者と評価される側の関係性の構築
「説明できる評価制度」をつくることで導入時点での社員の納得性を高めてくれます。
3.評価制度は完璧に作り上げない
このページを閲覧いただいている方は、「ちゃんとした人事評価制度を作らなければ」とか「不備のある評価制度ではマズい」と思われている方が多いかもしれません。そんな方にとっては、押さえておきたいポイントとして「完璧に作り上げない」というのは不思議な印象を抱かれるかもしれませんが、これには理由があります。
今ある評価方法の可視化
私は、社員の方の不満が「どうやったら評価されるのかわからない」「どうすれば賃金が上がるのか」という説明がされていないことへの不満であるならば、基本的には、今支給している賃金がどのような評価で決定されているのかを可視化して、制度に落とし込んでいくという方法を薦めています。
いったん今ある評価方法を可視化して、そのあと、より良い方法に向上させるという手順のほうが、しっかり土台づくりができます。
一気に理想を目指して作ろうとすると、実態とかけ離れすぎてうまく活用できません。現状を分析し、検証し、その後より良いものを作る、という流れです。
今までと「変わらない」という安心感から始める
そしてもう一つ、今までとは何も変わりませんよ、ということを伝えられる効果も大きいです。
今までの処遇を決めていた方法を可視化すると伝えれば、それは何もこれまでと変わらないという安心感になります。
そもそも制度を作るらしいという噂の段階から、社員の抵抗が強いような場合もこの手順で作ることが最終的には合理的だと思います。そのうえで、人事評価制度は6割完成した時点で運用を始めましょう、と言っています。
完璧を目指すと出来上がったとき陳腐化している危険も
今の時代、ビジネスの状況がどんどん変わっていってもおかしくないなか、評価項目だけは変わらず、というわけにはいきません。社員も同様に成長していきます。つまり評価に完璧はなく、常に進行中と言ってもいいと思います。
そうであれば、完璧に出来上がるまで時間をかけていると、最悪スタート時点では、すでに陳腐化しているという状況もあり得るわけです。
それよりは、やりながら、改善していく、という方法が実践的です。結局のところ、何の制度にしても運用していくことでしかわからないことがあるものです。
では、6割って実際は、どのタイミングでスタートすればよいのでしょう。
その評価制度は、自社の社風、組織風土に合ったものになっているか
具体的には経営理念やビジョン、ミッションに繋がるものかどうか、ということです。これらの評価項目の先にはビジョンの達成が見えているか、どうかです。
その表現が伝わるかどうかなどは実際に運用始めてから、修正すればよいものです。
以上、「ビジョンとつながる評価制度」「公平で納得できる評価制度」「評価制度は完璧に作り上げない」という3点について、押さえておきたいポイントとして紹介させていただきました。
すぐ取り組めるもの、時間をかけて考えなければならないもの、貴社の状況に応じて対応が異なってくるかとは思いますが、人事評価制度を作ろうと思ったときにはぜひこの3つを思い出して、取り組んでください。



