部下にもっと任せたい、でも任せきれない。そう思いながら、つい自分が口を出してしまう、そんな経験はありませんか。
とくにリモートワークが増えた今、「任せるつもりが、画面越しに指示してしまっている」という場面も起こりやすくなっています。
このページでは、「任せるつもりなのに、うまく任せきれない」状態から一歩進むために、押さえておきたい3つのポイントをお伝えします。
ぜひ、貴社の管理職育成や、次世代リーダーづくりのヒントとしてお役立てください。
- 「任せるつもり」が「指示」になってしまう瞬間
- 信用と信頼のギャップを理解する
- 任せるために決めておきたい2つのこと
1.「任せるつもり」が「指示」になってしまう瞬間
今、このページを読んでくださっているあなたは、経営者でしょうか。管理職でしょうか。
もしかすると、「もっと部下に任せたい」と思いながらも、つい会議や業務に口を出してしまうことに、少しモヤモヤしているかもしれません。
そんな状況を象徴するような出来事がありました。
リモート会議での「任せる」宣言
ある関与先の本部長から、こんな宣言がありました。
「当社もリモートワークを導入したので、私がリモート参加するときは、会議の進行を部下に任せてみようと思います」
そして私には、「いろいろフォローお願いします」とのご依頼。
こうして、初めて部下の方が進行役を務める会議がスタートしました。
画面越しの“ひと言”がもたらすもの
会議が進む中、リモート参加の本部長が画面越しに、
「こうしたほうがいいんじゃないかなぁ」
と発言されました。
本部長としては、良かれと思っての“アドバイス”です。
しかし、進行を任された部下からすると、それは「指示」に聞こえます。
「任せる」と言われていたのに、結局は細かく口を出されてしまう、
そう感じても不思議ではありません。
2.信用と信頼のギャップを理解する
ここで一度、立ち止まって考えてみたいのが、「信用」と「信頼」の違いです。
本部長は、部下を「信用」している
この本部長は、決して部下を疑っているわけではありません。
過去の実績から「できるだろう」と思っていますし、人事評価も高くつけています。
つまり、過去の行動や成果に基づいた「信用」はあるのです。
ところが、いざ新しい場面――たとえば、初めての会議進行や、経験の少ないテーマ――になると、
「本当に大丈夫だろうか」という不安が頭をもたげます。
「信用」と「信頼」は少し違う
ここで整理しておきたいのは、
信用: 過去の実績や事実に基づいて「できるはずだ」と判断すること
信頼: まだ経験していないこと、未知の領域にも「きっとやってくれる」と思えること
という違いです。
任せるとは、本来、目的だけを伝え、やり方は任せられた側が考えることです。
しかし、未知の領域になると、「こうしたほうがいいんじゃないかなぁ」という形で、不安が言葉になって出てしまう。
その結果、部下からすると、
「結局、信用されていないんだな」
と受け取られてしまうことがあります。
ここで少し、振り返ってみませんか
ここまで読んで、あなたはどう感じましたか
自分も「アドバイスのつもりで、実は指示になっている」ことがあるかもしれない
部下を信用しているつもりでも、信頼しきれていない場面があるかもしれない
もし、そんな気づきが少しでもあれば、ここから先の話は、さらに実践的なヒントになると思います。
では、「任せる」ために、具体的に何を決めておけばよいのでしょうか。
3.任せるために決めておきたい2つのこと
「無条件に信頼しなければ部下は育たない」
これは、ある意味では正しいのですが、現実にはなかなか難しい面もあります。
日頃の姿勢や態度から「やってくれそうだ」とイメージできなければ、任せる側も不安になります。
そこで、いきなり“丸投げ”のように任せるのではなく、まずは次の2つを明確にすることをおすすめしています。
1)どこまで任せるのか(権限の範囲)
どの部分を本人に任せるのか
どこから先は上司が最終判断するのか
この線引きを、あらかじめ決めておきます。
「全部任せる」のか、「進行は任せるが、最終決定は上司が行う」のか、ここが曖昧だと、任せる側も任される側も不安になります。
2)他の仕事との兼ね合い(優先順位)
今抱えている業務とのバランスはどうするのか
何を優先してよいのか
これを共有しておくことで、部下は安心して時間配分を考えられます。
「任せた」と言いながら、他の仕事もそのまま、という状態では、部下は疲弊してしまいます。
「なんだ、そんなことか」でいい
こうして書くと、「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれません。
でも、実はこの2つを明確にするだけで、任せる側の不安も、任される側の戸惑いも、ぐっと減ります。
少しずつ権限の範囲を広げ、優先順位を一緒に確認しながら任せていくことで、
「信用」から「信頼」へと、関係性が育っていきます。
任せる経験がない上司が「任せる」難しさ
今回の本部長は、将来の後継者候補です。
社長も「もっと本部長に任せないと」と口ではおっしゃっていますが、なかなか実行できていません。
自分自身が「任される」経験をあまりしてこなかった上司ほど、
「任せる」という行為そのものがイメージしづらい、ということもあります。
それでも、これからの組織づくりにおいては、
信頼して任せる経験を積んでいくことが、上司自身の成長にもつながっていきます。
以上、「『任せるつもり』が『指示』になってしまう瞬間」「信用と信頼のギャップ」「任せるために決めておきたい2つのこと」という3点について、押さえておきたいポイントとしてご紹介しました。
すぐに取り組めることもあれば、時間をかけて関係性を育てていく必要があることもあると思います。
それでも、「部下に任せて育てたい」と思ったときには、
ぜひ、ここでお伝えした3つのポイントを思い出して、取り組んでみてください。



