頑張ることは我慢すること?

第1043号

支援を依頼された会社の人事部
との面談で、会社の方針を受けて、
人事部が作ったスケジュールを
見せてもらいました。

今から来年3月までに、
これとこれとこれをやりたいんですが、
と示された内容は、

到底人事お二人でできる量とは思えず、

率直に伝えたところ返って
きた言葉は、

「がんばってやるしかありません」
というものでした。

頑張るという言葉が私には、
ちょっと無理している、

何かを我慢しているように
聞こえました。

頑張るなら、成果につながる
ポジティブな頑張りであって
ほしいと思います。
—————————————–

主観と言われればそうなのですが
往々にして仕事で「頑張る」
という言葉を口にするとき

自分の経験を振り返っても

意を決してというか、
無理をする前提であることが
多いように思います。

そこに目的が見えているので
あれば、まだよいのですが

それでも、何かを犠牲にするような
我慢の上に成り立つ頑張るなら、
避けなければなりません。

ちょうど同じころ、
36協定のご相談をいただく機会が
重なり、

長時間労働の削減も
相変わらず会社の大きな課題だと
あらためて感じています。

厚生労働省では毎年11月を
『過重労働解消キャンペーン』と
位置づけています。

https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001309084.pdf

頑張ると口にした人事の方も、
当然のように、自分の時間を
削って頑張るつもりでいます。

今から来年3月までに
技術職のスキルマップを作って
5カ年育成計画を策定し
研修の大枠を決める
というようなことを

私が支援に入ったとしても
実際に推進するのは人事の
お二人で

採用活動をやりながら
2人でできるボリュームだとは
思えませんでした。

心理学の『選択理論』は、
人の行動には目的があって

プラス要素である「快」しか
選択しないというものですが

人事の方の選択は、快とは
言い難く、無理があります。

継続した成果には結びつき
ません。

いろいろと打ち手はありますが

会社全体として、
「長時間労働対策」という
視点からも、やれることが
あるように思います。

それは、
現状把握-実態の見える化です。

誰でも思いつく普通のことかも
しれませんが、これがなかなか
できていません。

36協定を届出するときも、
法律の上限の時間を書いて
出すことで対応し、

実態の把握はできていない会社
が案外多いものです。

把握する場合でも、
人数が多いので無理もないのですが、

明らかに残業が多い部署だけ
数字を拾う傾向があります。

会議に参加して、毎月残業時間
の報告を聞かせていただく会社
があるのですが、

「残業が多いのはうちの部署は
1人だけです」という回答を聞く
ことがあります。

暗に、その他の社員は会社が
決めた上限以内の時間数に収ま
っている、

とおっしゃりたいのですが、

誰だから、という例外はなく、
1人でも残業時間が多ければ
失敗なんだ、

という視点は、大切だと思います。

組織として一か所に残業が「集中」
しているといういびつな状態が
表れているということだからです。

これはおかしい、と思えるかどうか
です。

そういう視点がないと
人事の方のような我慢の頑張りを
見つけることはできません。

残業そのものが悪いことだとは
言い切りませんが、

その残業が成果につながるのか
どうか、です。

成果につながらないとは
どういうことかと言えば

自分で決めていないこと

やらなければならないと思って
やっていることも含めて、

やらされていること

こんなふうに感じていることでは、
継続した成果にはつながって
いきません。

人事部のお二人は、育成や環境づくりの
課題について、いつまでに
という期限を示されていなかったので、

自ら、
期末までに、と期限を決めた
ようです。

これは、自分で決めた(選択した)
とは言えません。

通常、就業規則では
「時間外労働は会社が命じるもの」
という前提を書いています。

社員が自ら時間外労働の必要を
判断する場合は、

「事前に会社の許可を得ること」
としています。

これを形式に終らせず
実務として遵守するには

仕事の目的と期限を
上司と部下で共有することで

上司が時間外労働を命じる
ことの根拠となり

社員は、
自ら判断することができます。

頑張ることが目的化しないように、
しっかり現実的なゴール設定をして、
『目標達成』することが大切です。

そのために頑張るんだと思います。

頑張る、という言葉が精神論に
ならないように気を付けなければ
ならないと思います。

お読みいただきありがとうございました。
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