第922号
定年後に再雇用された際、基本給などの
賃金が大幅に減額されたのは不合理な
待遇格差だとして、
自動車学校に勤めていた嘱託職員2人が
定年前との差額分の支給などを学校側に
求めた訴訟(いわゆる名古屋自動車学校事件)で、
定年後再雇用時の基本給が
定年退職時の基本給の60%を下回る
部分及び賞与について減額は不合理、
とした高裁の判断を、最高裁は、
審理をやり直すよう差し戻しました。
この裁判事例から会社として
リスクを回避するために
ルールを決めて説明できる
ようにすることは大切ですが、
業務内容に差をつけたり
一律にルール決めすることが
困難なのであれば
むしろ高齢者をどう活かすか、と
考えて仕組みを作ることから、
自社にとっての最善の方法が
みつかるのではないかと思います。
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最高裁が差し戻しした理由は
1.各基本給、賞与の性質や、
これを支給することとされた目的を
十分に考慮されていない。
2.労使交渉の経緯を考慮していない。
というものです。
言い換えれば、もう少しいろいろと
検討して判断しなさい、
ということです。
地裁、高裁のように
基本給を勤続年数で決まるものと
捉えるのか
最高裁が言うように
他の要因も含めた複合的性質を
持つものとして捉える余地はないのか
いずれになるかで
裁判の行方は大きく変わってきます。
差し戻したことから
最高裁の意向は、高裁等の決定とは
違うのだろうと推察し、
会社有利の結果になると考える
向きもありますが
それはなんとも言えません。
ただ、最高裁は60%については
判断の対象として触れていません
ので、60%がこの裁判の結果をもって
減額基準とはならないと思います。
今後の審理に注目です。
この判決から何を学び、どういう
対応をすればよいか、ですが
今回の再雇用者の職種は
正社員と同じ教習所の
教習指導員ということで
なかなか職務内容、責任に
差をつけるのは難しかった
とも思われますが、
主任の役職を外すだけで、
責任範囲が違うという
説明にはならなかった
ということはあると思います。
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2020年4月1日に施行された
パートタイム・有期雇用労働法では
”求めがあった場合は、説明する義務がある”
としています。
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確かに説明することが
できるかどうかは重要ですが
このことから
正社員と再雇用者の職務内容、
責任に具体的な違いを設ける
ことを
目的とするのでなく、
再雇用者に十分力を発揮して
もらうことを
目的として、
具体的な違いを明確にする
という考え方をするのが
よいのではないかと思います。
各社の賃金規程では
基本給について
『基本給は、本人の職務内容、技能、
勤務成績、年齢等を考慮して各人別に決定する』
というような記載をしていることが
多いと思います。
規程にどこまで明記するかどうかは
別にしても
この裁判を受けて
基本給、賞与の「性質・目的」を
賃金規程に書いている定義では足りず、
説明できるようにしておく
必要がでてくるだろうと
思われるのですが(賞与も同様です)
ここでも、まずは、
高齢者の意欲と能力をどう評価
して基本給を工夫するか
と考えてみることが先決のように
思います。
高齢社員の評価シートをどうするか
というご質問を受けることが
増えてきています。
少子高齢化を受けて、高齢者に
働き手としての期待も高まって
きているからです。
以前なら、評価をしないというのが
普通のように思われていましたが、
先日、ブログでも取り上げたように
現役並みに処遇する会社が
大企業で増えてきており、
再雇用者も正社員とは別の基準で
評価することが必要になってくると
思います。
もともと中小企業では
65歳以上の方が第一線で働いて
いる事も少なくありません。
一律年齢で、線引きするのは
いよいよ難しい時代ではないかと
私自身の年齢を顧みても感じています。
私の場合、高齢者の評価項目については、
会社の意向をうかがったうえで、
売上げに貢献する部分の評価項目の
比重より、後進の指導の評価項目の
比重を高くするような評価方法を
伝えることが多いです。
再雇用者のモチベーションを
上げるためというのが大きな
要因ですが
もちろん、今回取り上げた
裁判のような議論を回避する
意味からも
評価シートを使って
職務内容、責任範囲に差異を
設けておくことは有効です。
定年から5年、いずれは
70歳までの雇用を想定
すれば、10年あります。
定年と同時に評価も終了とは
限りません。
5年後のビジョン達成のために
会社組織はどうなっていて
そこに再雇用者はどういう
位置づけ、
貢献をしてもらいたい
と思うのか
状況や立場によって
期待度が違うなら、
それを整理して
必要なら役職以外の
社員資格(例-マイスターやアソシエイツ)
を設けたり
という工夫をしてもよいのでは
ないかと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
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