賞与原資の決め方を社員が知っていること

第919号

日本経済新聞社がまとめた2023年夏の
ボーナス調査最終集計(6月30日時点)は、
全産業の平均支給額が前年比2.60%増の
89万4285円でした。

伸び率は鈍化したとはいえ、2年連続で
過去最高を更新しました。

過去最高でも、実質賃金のマイナスは
変わらない、ということも深刻ですが、

こういう記事を読むと、つい金額だけに
反応して、自分の金額と比較して
一喜一憂してしまいがちです。

金額が一番わかりやすい、ということも
ありますが、

どうやって賞与の額が決まるのか、
知らないから金額に反応するしかない
んだとも思います。
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さて、
賞与原資額、どうやって決めていますか?

あるいは、決まり方を知っていますか?

私の関与先でも
昨年がこの金額で、
今年は粗利益も前年約95%だから、
人件費も同じ比率の額で決定。
という前年対比での決め方、
案外多いものです。

いくら出せるか、というのが
基準になります。

そうなると、いくら出せそうか、が、
わかってからでないと
賞与について検討できないことに
なります。

これまで、その決め方で
大きな経費の増加に至らなかった
のであれば、

「経費管理」としては、
今のところ問題ないと
言えるのかもしれません。

でも、社員には説明ができません。

直前にならないと、賞与原資を
決定することができないからです。

私は、相談されたとき、
このようなお話をしています。

目標の粗利益が1億円
目標労働分配率が50%
賞与を含めた支払い可能人件費総額は
5000万円です。

一般社団法人日本キャッシュフローコーチ協会代表理事の和仁達也さんが、西順一郎先生の著作である『戦略会計STRACⅡ』のSTRAC表を加筆引用して、会社のお金の流れの全体像を示したもの

では半年後
粗利益が1億
支払い済み人件費が4500万円のとき

実労働分配率は45.0%となります。

この差の5%が賞与原資として
支払い可能と考えるというのが
大前提だとお伝えしています。

粗利益×目標労働分配率-支払い済み人件費総額
 ↓   ↓
1億円×50%-4500万円=500万円です。

実際には、就業規則に
「会社の業績によっては、支払わない場合もある」
と書いてあり、

上記の計算式にあてはめると、
マイナスになっているのに、

前年並みの支給をしている
会社もあります。

そんなふうに無理して
支給していても、

会社は、がんばってくれていると、
いっときは感じるかもしれませんが、

来年の保証がないと、やはり
社員は不安が先にたちます。

そこで、上記の労働分配率です。

こういう計算方式で決めている
のであれば、賞与原資を社内に
事前に示すことができます。

毎月の粗利目標と実績の労働分配率を
明らかにすることで

その月に獲得した粗利益が確定すれば、
目標との差額を賞与原資とします。

と、伝えることができます。

社員が、
どうすれば賞与が出るのか、
もっと増えるのか、

知っていることは大切です。

売上、粗利を作るのは
社員ひとりひとりだからです。

自分達の賞与原資が
どうやって算出されるのかが
わかる、というのは、

会社の業績が賞与に直結する
ということへの理解が深まる
ことでもあると思います。

これって、社長からすれば
当然のことなのですが、

これでようやく、
会社の業績が自分ごとに
なります。

自分ごとになるから、

どうやって粗利を増やそう
どうやって生産性を上げようか
という取り組みのアイデアが
社内から出てくるのではないか
と、思います。

賞与原資の算出方法を
明文化するとき、

障壁というか、難しいのが

「社員の生活の安定のためには
経営者としては、
払えないとは言えない。
払ってあげたい。」

という社長の想いです。

心情は理解できますが、

前年対比で支給していると
労働分配率も変動し、
会社にとっての適正比率が
いつまでたっても見えてきません。

変動するから、
中小企業では労働分配率は
指標として使えない

という悪循環にもなって
しまいます。

最初は労働分配率でなくても
経常利益の〇%という表現でも
よいと思います。

事業年度の最初に賞与原資の決め方、

いずれは、賞与額の決め方まで
明示することができれば

賞与を決定するのは社員自身
でもあることを、
知ってもらうことができます。

会社の業績が上がる
→賞与の原資が増える
→社員が安心して成長できる

この良い循環を定着させたい
ものです。

その決め方が正しいか
どうかの前に、

社員が安心して会社で
成長できるために

“事前に”賞与原資の決め方を
社員が知っていることは
やっぱり大切なことだと思います。  

お読みいただき、ありがとうございました。

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