第894号
すでに評価制度があるという会社に
ヒアリングすると、
「お恥ずかしいのですが
賞与は事業部長に予算を渡して
分配してもらっているんです」
という答えがかえってくることが
あります。
仕組みがないことを恐縮して
そうおっしゃるのですが、
いえいえ、恥ずかしいことでは
ないです。
むしろ形としては理想的です。
そこに、上司と部下の
信頼関係があれば、
実は、評価制度は
作成2割、運用8割で回す
くらいがよいと思っています。
公平も、追い求めすぎると
袋小路に入ってしまいます。
評価はどこまでいっても
公平ではないという
不都合な真実と向き合う
ことが必要だと思います。
————————————————————-
毎年、管理職研修の一環で
評価者研修をしていても、
一向に評価のばらつきが
なくならないということが
あります。
中小企業の場合、
新しい管理職が毎年生まれる
ということでもないので、
周期的に評価者研修を受けて
くださっている方もいます。
これっておかしくないですか?
公平な評価がなかなかできて
いないから、毎年評価者研修が
行われているとも言えます。
それほど、誰にとっても公平、
というのは難しいものです。
公平とは、辞書によると
—————————-
かたよることなく、すべてを同等に扱う・こと(さま)。
主観を交えない・こと(さま)
—————————–
「人と人は違う」ということが
公平を難しくさせています。
上司が、ここまで細かく観察して
評価しています。と
部下に安心してもらうためにも
評価項目を細かく細分化している
会社もあります。
評価する項目がずらっと並んで
2枚にわたっていることがあります。
細かく評価していけば
評価の誤差が小さくなって
不公平が減るのではないか、
と思うかもしれませんが、
実際にたくさんの項目を
日常観察し、評価できるかと言えば
無理だと言わざるを得ません。
初めて作る評価シートは
手探りなので、項目を2つ~3つに
絞るのは確かに難しいとも思うので
ある程度、数が増えるのは仕方
ないと思っています。
ですから、制度導入後3年、
5年経った時点で減らして
いくことをあらかじめ助言
しています。
評価する上司も忙しいです。
行動評価で10も項目があれば
覚えられるものではありません。
常に部下の評価シートを持ち歩き
自分の仕事もする、というのは
無理だと思います。
やろうとすれば、上司の生産性が
下がるというものです。
結局、評価するときは
感覚の評価にならざるを
得ません。
でも、生産性を上げるには
これが合理的なやり方です。
ここに不都合な真実があります。
社員に安心してもらい、
評価制度を信頼してもらうには、
評価が公平でなければならないと
思うからだと思います。
残念ながら、評価する側が公平
だと思っても、必ずしも評価される
側から見れば、公平ではない
というギャップは常にあります。
経営者も人事も、実はそんな
ことはわかっていても、
しっかり評価していますよ、を
示さなければならないと
思っているところもあると思い
ます。
ただ、そのための時間と労力が
かかることが、
評価制度の運用が上手くいかない
理由のひとつにもなっています。
上手くやろうとすると、
そのためにコストがかかる
ことを経済学では
『取引コスト』といいます。
しっかり評価している、を
示す方法は
公平性の追求ではないと
思うんです。
同じ時間と労力をかけるなら
評価される人との『信頼関係』を
築いて、納得性を上げること
だと思います。
信頼関係を築くにも、やっぱり
上で述べたような『取引コスト』は
生まれます。
でも、信頼貯金という言葉が
あるように、信頼を貯める
ことで、コストを下げることが
できます。
この上司が言うのだから
そうなんだろう、という
関係性が生まれます。
評価の説明を、理解しよう
という姿勢で聞いてくれます。
労力と時間が短縮されます。
では、信頼関係はどうやって
築くのかと言えば、
「お互いを知ること」
そのひとつの方法が「面談」です。
評価制度にはそもそも
「定期面談」「評価面談」が
ありますが、
評価面談はあくまで評価結果を
伝える場です。
信頼関係は定期面談のなかで
深めていくのが望ましいです。
以前、面談について書きました
この面談の場を有効に使って
評価制度を運用していただきたい
と思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
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