第858号
11月30日の日本経済新聞朝刊1面に
“企業「インフレ手当」相次ぐ”
という記事が載っていました。
コロナ禍では在宅勤務手当
そして今回は
原料高によるインフレ手当
人事制度構築のときに
いらない手当をなくしても
こういう特別手当が出てきます。
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全部の手当が不要とは
言い切りませんが、
記事には、インフレ手当の支給で
実質賃金の目減りを防ぎ、
従業員の士気向上につなげる
狙いがある
と書かれています。
一方で記事の中で、
『個人消費に与える影響は軽微ではないか』
というエコノミストの意見も
載せています。
この記事が言いたいことは、
物価上昇に効果があるのは
賃上げだ。
ということのようですが
見出しだけを見ると
手当の支給を推奨している
ようにも見えます。
お客様の社長とお話していて
「何か手当を出してあげたほうが
よいのでしょうか?」
というご質問を早速いただきました。
ちょうど賞与の時期でもあって
そう思われたようです。
一時金は1回だけですから
その場しのぎでしかないと
思います。
コロナで個別に配付された
給付金もそうでしたね。
というようなお話をしました。
給与に上乗せして毎月支払う
企業もあるようですが、
いつまで支給するのか、
この期限の設定が難しい
ところです。
期限を決めないでスタート
すると、結局これまでの
生活関連手当のいくつかが
そうだったように、
形骸化してしまう恐れが
あるからです。
そしてこの手当は不要だから
と言って、簡単には廃止できません。
昔から、
生活を支える、補助する、
という意味あいで
住宅手当、家族手当、食事手当、精皆勤手当
地域手当、年末年始手当 等
いろいろな名前の手当が
生まれてきました。
賞与や退職金の算定の基礎である
基本給を上げないために
手当で支給して、総支給額で
賃金を上げてきた
という経緯もあります。
そして、ここ数年、
同一労働同一賃金の最高裁の判決
に伴い、正社員に限らず全社員が
対象になり得る手当について、
廃止や見直しする動きが活発化
してきました。
何より、『労働の対価』としての
賃金に支給項目をしぼる
という考え方が多くなって
きたように思います。
少なくとも、人事評価制度を
作るときには、賞与や退職金は
基本給と連動させない、
というのが普通になり、
基本給は年齢や勤続年数と
関連付けない=属人給を廃止
多様性の考え方の広がりもあって
手当は限られたものについてのみ
支給される
という流れになってきていたと
感じていました。
ここにきて、新しい名称の手当が
支給されるという動きが、
大企業を中心に広まっていくのなら、
要注意だと思います。
大企業は、いつ業績が上向くか
先が見えないなかでも、
賃金は上げていかなければならない
という、国からのプレッシャーも
あると思います。
もちろん、人件費アップは
大企業にとっても、大きな
経営判断ではありますが、
この会社でどうやってキャリアを
積んでいこうかと考える社員にとって、
これらの手当がエンゲージメントを
高めたり、魅力あるものとしては
映らないと思います。
人件費は粗利の中から出して
いるものです。
粗利が増えなければ、本来
人件費は増やせません。
原資が増えたから賞与が増える、
昇給額が増える、というものです。
こういう仕組みになっている
ことが明確になっていて
「継続」して支給されている
ことが社員にとっては
重要なんじゃないかと思います。
やらないよりマシ、という
状況判断であるならば、
おすすめできません。
中小規模の企業なら、
なおさらです。
それでも、経営者の方は、
つい手当の支給に揺れて
しまうことがあります。
賃金が上がらないことを
目の前の経営課題(目標)と
捉えるなら、
すぐになんとかしたいと思い、
対策として手当の支給をする。
という、身近ですぐにできる
手段に、手を出してしまう
ことがあります。
でも、少し長い時間軸で
考えて、賃金を上げることが
目的ではなく、
何のために賃金を上げるのか、
と考えて、
賃金を上げた先の”目的”が
はっきりすれば、
すぐに結果は出ないかも
しれませんが、
どうやって目標を達成しようか、と、
賃金を上げるにしても
その他の選択肢が広がって
別の決断をすることができる
のではないかと思います。
お読みいただき、ありがとうございました。
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