事業承継とコロナ禍

第632号鈴木早苗ブログ

日本の中小企業数360万社中、
2025年までに70歳を越える
経営者の中小企業数は
約245万社といわれています。

少なくとも5~10年以内には日本の中小企業の
概ね3分の2が次世代への「事業承継」を
実行しなければならないでしょう。

新型コロナウイルスは、中小企業の8割以上に
窮状をもたらしています。

当然ながら、資金の充当を望んでいる声は
大きいのですが、事業承継、引き継ぎの
ニーズも根強いものがあります。

事業承継をすることが
緊急性も重要性も高い課題だと
経営者も、国もわかっているのですが
中小とくに小規模企業の
事業承継は進んでいません。

事業承継は引き継げば終わり
(ゴール)ではありません。

「事業承継後」が大事ですし、
何を引き継ぐのかも重要です。

今日は、新型コロナウイルスの
影響を少し違った角度から
考えてみました。

少子高齢化もあって、
なかなか後継者がみつからない
というのが中、小規模企業の
実情です。

誰に引き継ぐかに
特に小規模のオーナー経営者は
こだわります。

それは、引き継ぐのが
会社の「のれん」でも
あるからです。

M&Aの前に行われるデューデリジェンス
と呼ばれる調査では見えづらい
事業の価値です。

この価値をなかなか
大手の仲介会社では
測れなくて、
小規模企業のM&Aは
うまくいっていません。

M&A以外の承継では
5年~10年かけて
後継者を育てるというのが
一般的ですが、

新型コロナウイルスによって、
一気に経済も経営も状況が変わる
ことを目の当たりにすると、

事業承継は後回しには
できない課題であり、
事業の継続を
考えるうえでも
加速しなければ
ならない

というのが、
冒頭で述べた、
根強いニーズと
言えるものです。

承継の種類は次の3つです。
・親族間承継
・社員への承継
・第3者承継
(いわゆる小規模M&A)

親族や社員への継承では
経営者として求められる資質、
能力が重要です。

今、社会環境の中で
求められる経営者の資質、
能力が変化しています。

たとえば
経営はトップダウンでなく
”全員(チーム)経営”

働き方は
”画一的から多様性へ” 

財務は
”過去の数字から
未来の数字へ” 

視点や状況が変わっています。

あせってうまくいくものでは
ありませんが、時間さえ
かけていれば後継者が育つ
ものではありません。

一般に言われる
事業承継を進める手順は次の通りです。

——————————————————————————-
●現状の把握 

1 会社の現状(ヒト・モノ・カネ)
2 経営者自身の資産等の現状
3 後継者候補のリストアップ

●承継の方法・後継者の確定

●事業承継計画の作成
——————————————————————————-
出典:「事業承継ガイドライン(平成18年6月)」
事業承継協議会 事業承継ガイドライン検討委員会

これまで多くの
後継者を見てきて
かつ、ヒトに関する
専門家として

人事の承継について
考えてみると

後継者が、引き継いで
一番苦労しているのは
ヒトの問題です。

ですが、事業承継では
最初に取り組む
「現状把握」では

どうしても
事業(競争力、将来見込み)
資産(経営者、会社)
財務(キャッシュフロー)が
主になってしまいます。

そのなかでも
最初に手をつけるのが
お金の可視化。

いわゆる借入金の把握と
対策です。

ヒトについても
後回しにせず、可視化して
対策を打つことが必要です。

では、具体的に何をすれば
よいのでしょうか?

社員の現状把握と
労務問題の対策は
後回しにはできません。

——————————————————————————-
人員構成(年齢、雇用区分 男女比)
定着率(勤続年数)
人件費、報酬水準
会社規定の有無(雇用契約書、労使協定、就業規則)
法令順守度(労働時間、休日、休暇)
人事制度の有無
———————————————————————————-

これらは、
第3者承継(いわゆる小規模M&A)
について、確認する項目でもあります。

雇用調整助成金で
浮き彫りになった
多くの会社の社内規定の
文書化の未整備は

中小企業の
現在進行形の課題であり、
経営の存続にも
影を落とすものです。

社会保険労務士のはしくれとして、
規定の整備を強く進言して
これなかった責任も感じます。

本年4月からは
残業時間の上限は、原則として
月45時間・年360時間とし、
臨時的な特別の事情がなければ
これを超えることはできません。
【労働時間の上限規制】
厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/overtime.html

それ以外にも
昨年からスタートした
有給休暇5日取得の義務化なども
継続して実施していかなければ
なりません。

お金(相続も含めて)も
大事ですが

社内ルールもひっくるめた
ヒトの問題を解決して
おかなければ
事業承継後に苦労します。

コロナ禍という言葉を
最近よく耳にします。

いわゆる
新型コロナウイルスによる
災難を指した言葉ですが、

経営の大きな転換期を
チャンスにして
事業承継を前に進める
ために

ヒトの問題の解決
だけでなく
ヒトという
目に見えない
事業の価値を
高めるチャンスとして
とらえていきたいものです。

お読みいただき、ありがとうございました。

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