話せば何がわかるの?

第1065号

先日、人事部を舞台にしたテレビドラマで
パワハラがテーマでした。
その落としどころは、というと、一言で言えば
「話せばわかる」でした。
そもそも、話せばわかるのでしょうか。
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話してわかりあえるなら苦労は
しない、と実際の人事の方が
突っ込みいれたくなるだろうなぁ
と思う場面も多かったのですが、

話せば、わかりあうことは可能
だとは思います。

だからと言って、ドラマのように、
退職を思いとどまるとは限りません。

話せばわかってくるのは、
お互いの立場や思考の違いだったり
します。

違いをわかったうえで、どこに共感
をもって会社で成長を目指してもら
えるか、が重要です。

多くの会社では、対話の重要性を
感じて、新人~管理職に至る研修
のなかで、何度となく説いています。

それでも、肝心なことは、
話せなくてわからない、
というのが、現状だったりします。

とはいえ、

結果として問題がほとんど起こっ
ていないという認識であれば
うちの会社は、話はできてる、
と判断している経営者の方も
多いものです。

そこに、ある日突然、
退職代行から連絡が来てしまう、とか、
退職願や保険証が送られてくる、
というのは、どういうことでしょう。

30年以上前、私は部署異動が
納得できず、退職の意思表示を
することで、上司と面談の時間を
もらいました。
(もらった、という表現が昭和な感じですが)

そのときの上司の部長が
しみじみ、

「退職願いが唯一の社員の武器だよね」

というようなことを言って
おられたことを思い出します。

当時は、一部上場企業に
いましたが、

それくらい自分の意見を伝える
チャンスというのはなかった時代、
だったかもしれません。

私の場合
実際上司と話をしたところで、
会社の決定は覆されません。

私は異動を受け入れたのですが、
私のための時間を上司が持って
くれて、一通り言いたいことは
言えたので、自分の中で、折り合い
をつけたのだと思います。

今も確かに大きな問題を抱える
いわゆるブラック企業は存在し
辞めざるを得ない、
でも辞めさせてもらえないという
状況で苦しんでいる方もおられる
のでしょうが、

退職の意思表示という自己表現
することもなく、

退職代行や、「辞めることにしました」
というメールやラインで終了に
してしまう社員の方のなかには、

いわゆる問題がない会社で、皆が
普通に仕事をこなしているなかで

なじめない、不満をもってしまう
自分のほうに非がある気がして
自分の選択の失敗と感じ、

自分の意見を伝える最後の機会を
放棄して、

なかったことにしたい、という
思いがあるようにも思います。

Z世代だ、売り手市場だからと
いって、みんながドライに割り切って、
辞めていく人ばかではないだろう
と、私は思っているのですが。

ですから、やはり、
日頃からのコミュニケーション、
対話が必要なんだ、という単純
なことではないのが、厄介です。

コミュニケーション、対話を
通じて関係性を作ることは
重要です。

ただ、それだけでは不十分です。

言いづらいことを言わなくても
表面的にはコミュニケーションは
成立しているように見えるからです。

大きな問題がない=人間関係が良好
とは言いきれません。

組織の成果は
人材力×組織力×関係力です。

関係力の効果を引き出すには
組織力が必要です。

組織力は仕組み、ルールです。

あらかじめ明確にしておかなければ
ならないのが組織力と言われる
次のようなものです。

・対話することの共通の「目的」

・会社の「ミッション・ビジョン・バリュー」

これらが仕組みとして組織に
あって、それを土台にした対話が
重要なんだと思います。

仲間から以前聞いた「たとえ話」で
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一緒に暮らしている男女が、鍵がなくなったともめている。
これって、あらかじめ置く場所を決めておけばもめないのに、
ついつい聞けばいいとか、ここに置いておけばみつけるだろう
と、関係性を過大評価して喧嘩になっている。
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関係性にばかり目がいくと、
肝心なことを見落としてしまいます。

話せばわかった結果として
会社と本人の目指すところが相容れない
ということが明らかになってしまうかも
しれません。

退職を選択する可能性もあります。

それでも会社は組織の目指すところを
伝える必要があります。

そこまで考える必要はないと
言われてしまうかもしれませんが、

例え、退職するにしても
会社に合わなかった自分を失敗
したと、ただ悔やんで傷にするので
なく、

自分がどうしたいのかを選択した
結果として逃げずに受け止めて
もらいたいとも思うのです。

会社としても
3年、5年後を視野に入れたとき、
こうしたことを乗り越えて
組織を強くするための必要な痛みだと
考えられたら、と思っています。

お読みいただきありがとうございました。
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