「得だから」では行動できない

第1063号

何かを選ぶとき、得か損かで
選ぶのが早いような気がしますが、
実は損得だけでは人は行動できません。

行動経済学では
損するのが100
得するのが100
であれば
損しないほうを選択する。

という行動傾向があって
『損失回避性』というバイアス
(偏り)が働いているからです。
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実は先日、この『損失回避性』を
実感することがありました。

私事ですが、
NTT東日本の料金改定にともない
3月末までに申し込めば、通信の
工事費無料というサービスのご案内を
もうずいぶん前に受け取っていたのですが、

3月31日まさに期限ギリギリまで迷って、
ようやく工事担当の人から一度説明して
もらう、というところまでこぎつけました。

数万かかる工事費が無料になるという
サービスなのですが、

現状インターネットの通信状況に
不満もなく使えている私にとっては

損するのが100
得するのが100
状態です。

『損失回避性』というバイアス
(偏り)が働きます。

そこに、インターネットに疎いとか、
苦手意識が私にはあるので

それが、より、損しないほう
を選択する。

というわかりやすい行動傾向を
示します。

郵便で書類を受け取ってから、
3回窓口に電話して、

期限はまだ先だから、と
決断を保留してきました。

行動経済学の中の
『プロスペクト理論』に
よれば

どういうときに損より
得を選択するかと言えば

得が、損の100を上回る
200や250の場合です。

それくらいでないと、
価値を見出さないというのが
『損失回避性』です。

そして、
やるか、やらないかを
決められなくて
とりあえず現状維持。

というのが、私もやった
パターンですが、

これも、
『損失回避性』を
背景とした
『現状維持バイアス』
というものだと説明できます。

結局のところ、
人は「変化したくない」もの。

無意識に、現状維持を
選択する傾向を好むと
言われています。

変われないというのは
言い換えると「保有する」

モノでも考え方でも手放せ
ない、ということがあります。

誰しも、大掃除や引越しの時、
使わないのに捨てられなかったり

修理するより買い替えたほうが
安いとわかっていても、できな
かったり

こと自分の所有物に対しては、
高い価値設定をしてしまう、
という経験があると思います。

他人からみれば、
損得=100:150
であったとしても

自分にとっては
損の100とバランスとるには
200や250の利益を獲得しないと
バランスが取れない、

そう考えると、倍以上の利益
確保という大変な努力が
必要だと感じてしまい、

得するには大きな努力が
必要だから、
だったら、今のまま。

『現状維持バイアス』を好んで
しまうという流れです。

何もしないのが、一番安心
できる状態だと思ってしまい
ます。

事業でも、今までのやり方を捨てて
新しい取り組みに挑戦することは
リスクが高いように見えます。

ワクワクする、という方もおられる
でしょうが、

それは、自分のなかに出来ている
イメージがあるからです。

ですから、人や組織の問題が
山積みで、なんとかならない
だろうか?

というご相談をいただくとき、

どうなっているのが理想ですか、
とおたずねするようにしています。

問題が解決した後の状態のイメージが
明確でなければ、打つべき手段が
的からズレて、中途半端な結果に
終わってしまいます。

”人はそう簡単には変われない”
ということを踏まえると

少なくとも、

やるか、やらないか
というような二者択一を
しようとするのではなくて

選択を誤らないために、
やるタイミングはいつか?

という視点を持つことが
重要です。

問題が山積みだけど、
問題が解決した後のイメージが
明確でないなら、

目の前の表面化した問題は
解決しながらも、

まだ仕組みやルールを大きく
変える改革のタイミングではない
と考えることも重要です。

こちらから時々、投げかけたり、
ご自身でも考え続けていただく
なかで、

「やったほうがいい」から
「やる」に変わる

人それぞれの変わるタイミングを
逃さず捕まえることです。

そのとき、損か得かではない、

自分なりの基準が働いて選択
していると思います。

お読みいただきありがとうございました。
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