第987号

2年ほど前に親族から会社を引き継いだ
と同時に、理念や人事制度を作成された
会社からご相談をいただきました。

社員が上手くこれらを使えていない
ばかりか、うちには合わないと言って
いるということです。

会社の土台づくりができて
これからだというときに
「どうしてわかろうとしてくれないんだろう」
と嘆かれます。

社長の気持ち、よくわかります。

みんながやりやすいようにと思って
作ったはずなのに。

でも、内容以前に、
社員の方からすれば、まだ2年です。

「もう2年経った」と「まだ2年」
の間には、大きな意識のギャップが
あります。

その解消には丁寧さとスピードアップ
が必要です。
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社長は、継ぐ前から、ずっと会社の将来
のことを考えてきたので、2年よりもっと
前から会社の将来を思い巡らしていたわけで、

今、「やっと」「これからだ」という
気持ちで、前のめりです。

社員の方は、以前から事業承継されると
いうことは聞いていましたが、いざ目の
前に来るまでは、なかなか自分ごとには
なりませんでした。

ですから、気持ちは、まだ2年です。

この意識の差が埋まらなければ、
「どうしてわかってくれないんだろう」
は、解消されません。

社長には目指す組織のイメージ
（目標）があるので、そのイメージ
と現状のギャップを感じています。

社員の方はその目標を知りません
から、何がギャップなのか、わかり
ません。

当然、社長は目標について
説明されているのでしょうが、
そのイメージを共有できていないと、
やはりギャップは見えません。

理解してもらうには、目標を何度も
説明することしかなく、自分ごとに
していってもらうことです。

制度を作れば、明日から会社は
よくなる、というものではありま
せん。

丁寧に伝わるように伝えることが
大切です。

どうして新しい制度が必要なのか、
自分たちにとってどんな有益な
ことがあるのか、

そこを理解しなければ、積極的に
使ってみようとはなりません。

理解して、使ってみて、
効果がわかって、また使ってみて
だんだんと習慣のレベルになって
使いこなしていけるようになります。

そういう過程があって、ようやく社員
の方の行動がスピードアップして
社長が目指していた目標に一緒に
到達できるというものです。

実は、そういうことをわかっていても、
真面目な社長ほど、

やれば絶対よくなるんだから、という
思いが勝って

社員の理解のスピードを無視して
しまいがちです。

社員には社員の言い分があります。

変わればよくなるかもしれないけれど
そこに行くまでにどれほどの苦労が
あったり、仕事も増えるかもしれない。

今のままでいいじゃなか、
という思いです。

人は変化を好みません。

そして納得できなければ、行動は
継続しません。

社長が丁寧に説明を続けて、
社員の理解のスピードに合わせ
ようとすること、

社員の方にも、新しいことを受け
容れて取り組もうと思ってもらい、
スピードアップしてもらうこと、

この両方が必要です。

これってどういうことかと言うと、
時間軸を合わせることです。

合わせるために、社長は、目指す
目標を達成するための設計プランを
示すことが重要です。

社長には見えているギャップを、

埋めるには
どういう手段をとれば
最初の小目標を達成し、

次にどういう手段をとれば
次の小目標を達成し、
大目標のどこまで到達していて、

最後にこういう手段をとると
目指していた大目標が達成
できる

この過程を、だいたいでいい
ので、実際に描いてみると、

社長ご自身も頭の中で思って
いた時間軸が可視化されることで、

最初から大目標の達成を目指す
ことより、
小さな目標をいくつか越えた先に
大きな目標の達成があるという
進め方が、

社員の方と一緒に目指すには
現実的だと気づかれます。

たとえば、
理念や人事制度という仕組みも
作るだけでは不十分で、

仕組みを定着させるための
それを活かす人を育てて

仕組みを組織の力にするために
社員同士のコミュニケーション
を深める

これらを同時に走らせたり、
順番に行うことが必要です。

社員の方は、小目標をひとつひとつ
クリアしていくことで、

社長が目指す大目標のイメージを
ようやく少しずつイメージできる
ようになっていくものです。

そうして、ようやく、社員の方と
時間軸の共有ができて、歩調を
合わせて前に進めると思います。

お読みいただきありがとうございました。

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