『賃金 若手を厚く』10年前と変わったこと変わらないこと

第986号

今年の春闘の第2回の回答集計によると、
比較可能な平成25年(2013年)の
春闘以降で、額・率とも最も高い
水準に落ち着きそうです。

中小企業でも定期昇給相当込みの
賃上げ4.5%で、2013年以降、最も
高くなりそうです。

お客様の会社の人事からは
採用、定着のために若手の金額を
伸ばさなければという声を聞きます。

3月28日の日経新聞朝刊第3面の

「賃金 若手厚く中堅は減」
働き方多様化、薄れる年功
中小は全世代で伸び

こんな記事の見出しが目に入ってきました。
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厚生労働省は27日、2023年の賃金構造
基本統計調査の概況を公表した。
一般労働者の平均賃金は過去最高を更新
したが、世代別にみると大企業の35~54歳
の賃金が減るなど、若手に重きを置く傾向
が目立つ。

3月28日の日経新聞朝刊第3面より

大企業の話だけでなく、
中小企業はどの世代でも賃金が
増えています。

記事にもありましたが、
働き方が多様化し、企業の人的投資の
あり方も変わってきています。

あり方が変われば当然ながら
やり方も変わっていきます。

大企業の事例を見ていると、
単に賃上げしているだけでなく

60歳以降の働き方や処遇の見直し

初任給の引き上げ

賃金カーブの改善

等々。

いろいろと組み合わせて
今に合った賃金制度を模索
しているのがわかります。

確かに給与水準を一律に引き上げる
ベースアップは手法として簡単の
ようであり、わかりやすいです。

社員にとってもわかりやすいから
こそ、効果は持続せず、いつの間
にか埋没してしまいます。

実際、それだけでは、採用や定着に
効果は見込めません。

已むに已まれず
賃上げに踏み切った小規模の会社でも

賃上げの成果を上げるために
賃上げと同時に、あるいはその前に

手を打つことがあるんじゃないか
と思っています。

10年ほど前、経団連は
65歳までの希望者全員の継続雇用の
義務付けへの対策として、賃金カーブ
全体の見直し案を示しました。

当時、60歳定年まで
自動的に昇給する仕組みが
企業にはあって、それを断ち
切らなければならないと、

60歳まで増え続けていく「年齢給」
を廃止したり、

35歳程度でストップさせたり
したものです。

今また賃金カーブの見直しや
ベースアップが言われている
というのは、

10年経っても年齢給などの
属人給の比重が相変わらず
高い会社がある、

10年前に手をつけて賃金カーブ
(賃金表)を修正したものが
時代に合わなくなってきた、

ということだと思います。

これしかない、と
ベースアップ、賃上げに手をつける
前に、考えていただきたいのが

評価に関係なく、「年齢給」「勤続給」
というような名称で、
属性によって決定する属人給、

あるいは、自動的に毎年上昇する
ことから「年功給」として支給
されているものを、

全面的に廃止することを検討する
ことです。

現実には、単に廃止するだけだと
不利益変更になるので、

通常は、評価によって決定する基本給
に上乗せして、総額としては増えな
いかわりに減りもしない状況にする
ことが大切です。

10年前と違うのは
今は若い人材の採用が難しいという
ことであり

終身雇用ではない、ということです。

これまでなら
その企業風土をあらわす
”勤務態度”を守り、

”知識・技術”を身につけ、

”重要な業務”を遂行して

”成果”を上げて

そうして、一人前になるまでには
10年前後必要だから、一人前に
なるまでの間は、成果を求める
よりも、生活保障給に比重を
おいて、昇給していきます。

という説明が成り立っていました。

今は、この生活保障給という先行
投資を、10年後回収する前に辞めて
しまうというリスクが高くなっている、
ということです。

中、小規模企業が、賃上げの原資確保が
厳しい状況でも、初任給を上げ

賃金カーブを20代から30代に
かけて急激に上昇させていこう
というのであれば、

生活保障給という考えでなく
しっかり成果を求めていく
考え方に変えて

かつ、育つようにしなければ
ならない
ということになります。

終身雇用が前提であれば、
単に、賃金カーブの山を若い年代
に移動させて

50代は、なだらかな上昇、あるいは
現状維持から減少へ、というよう
な設計すれば

人件費総額も変わらない、
ということでしたが、

終身雇用が崩れた今は、
それで良いというわけには
いきません。

一人前と言われるまでの期間を
少しでも短縮して、

社員の方に成果を出してもらえる
ように育ってもらう必要があります。

そのためにも、
私自身が10年前も今も変わらず
お伝えしていることが

「どうなったら賃金が増えていくのか?」
を、賃金制度として社員に説明できる
ようになることです。

これを伝えられることは、今年の昇給は
いくらです。と伝えること以上に大切
だと思います。

お読みいただきありがとうございました。
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