評価制度もお笑いも世界観が大切

第903号

先週、新しい漫才の賞レース番組が
放送されました。

「THE SECOND」といいます。

大阪人としては、やはり見逃せません。

賞レースにありがちな
終わった後の審査員の批評が
炎上したり、同業者から不満の
声が上がったり、ということは、
これまでのところないようです。

大会アンバサダーの松本さんも
「観客の皆さんもずっと温かくて、
いい大会だった」と言っていたように

視聴率的にはよくなかったようですが
同業の方々からも好評で
視聴者からも、来年もやってほしいと
言われています。

みんなが笑顔で終わった
「THE SECOND」は、これまでの賞レースと
何が違ったのでしょう。
——————————————————————

大会は、コンビ結成16年以上を
対象として、1対1で競います。

勝敗は、一般の観客100人が

3点 とても面白かった
2点 面白かった
1点 面白くなかった

と点数を付ける方式です。

絶対評価で、両方に3点をつけても
構いません。

他の賞レースのように
点数で審査員が非難されるのは
避けたいと考えたプロデューサーが
試行錯誤の末、結果としてこの形に
なったそうです。

評価制度を導入している会社では
評価する側、される側から、不満や
批判を聞くことが多々あります。

評価点数の納得性を上げるために
評価決定会議を開いて

上司がつけた点数を他部署の
上司も一緒に会議で検討して
評価を決定していても、です。

お笑いと評価制度は違うといえば
そうなのですが

「THE SECOND」の
プロデューサーいわく、

「芸人さんの人生がかかっている」
わけで、
その意味では真剣度は同じです。
(ちょっと無理やりかもしれませんが)

「THE SECOND」では、概ね
採点や結果について不満の声は
聞こえてきません。

良かった点は、会場を「劇場」
に見立てた作り方だったことが
大きいです。

つまり世界観を打ち出した
ということだと思います。

プロデューサーもセット
カメラワーク、ネタ時間6分。
劇場感覚を意識したと言います。

劇場では、漫才の良し悪しは
観客の笑いです。

「笑い」の数、大きさがすべて
と言っても過言ではありません。

そんな舞台に毎日立ってきた
人たちが競う場ですから、

観客が採点した結果に
そもそも不満がでるものでは
ありません。

一般審査員の観客も同様に、
舞台に立つ芸人へのリスペクトが
あります。

講評を述べるとき
「お疲れ様でした」と
労いの言葉を述べてから
点数の説明をした観客をみても
あきらかです。

「THE SECOND」の「世界観」は
まさに「劇場」と言えます。

世界観は、モノの見方、こだわり、
そして強みです。

世界観を構築すると

・自分の価値観、考え方に合う
・なんとなく好き、気に入った
・なんか面白そう
・自分のことをわかってくれそう

という人が集まってきます。

「THE SECOND」はこの
劇場感覚を味わってもらう
ような大会にすると、

早くから表明することで、
そこに共感する人たちが
集まってきました。

お笑い好きでなければ4時間も
漫才見られません。

「笑い」という非常に個人の

価値観が現れるもののはずなのに、
「世界観」に共感し、100人の
審査員がそれを共有している
ことで、

点数が荒れることなく、
その場にいるすべての人の間に
連帯感が生まれていました。

これをもって、
「お客さんがあたたかい」という
表現になったのだと思います。

世界観が明確になるというのは、
ビジネスでも良い効果があります。

・理想のお客さまだけが自然に集まるようになる
・質が変動しても人が集まる
・差別化・独自化が容易になる

マーケティングの講座で
学んだことを思い出しました。

入念な世界観の構築によって
「THE SECOND」は
他の賞レースと差別化され

「THE SECOND」なら
そうなるよね。と受け入れられ、
炎上や批判の芽をあらかじめ摘む
ことができました。

中小企業で評価制度を作るとき
社長の頭の中を可視化するという
表現をすることがあります。

社長の世界観、価値観を
言語化して、制度に盛り込もう
というものです。

そもそも会社にいる人は
その世界観に共感している前提
ですから、それを反映した
制度であれば、大きな異論は
出てこないということです。

事業承継等によって
ものの見方が変わるなら

世界観を言語化したり
世界観につながる
ビジョンの言語化は必要です。

評価制度では、
何を評価するのか、

能力、行動、あるいは職務(ジョブ型)

これらのシステムも大事ですが
そこの土台に世界観があって
つながっていると、

どう評価するのかに込めた
会社の想いが伝わりやすい
と思います。

お読みいただき、ありがとうございました。
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