システム2の思考を習慣化する

第538号

お客様の会社の評価者面談の研修の日の昼食時、
同じテーブルになった部長さんが

「頭ではわかっていますが、褒めたくないのに、
褒められないですよね、正直。
でも褒めてますけど」

思わずご飯を飲み込んでしまいました。

午前中の研修の意味は通じてないのかと
少々ショックを受けながら、

「あぁこの部長さんは部下の前では
システム2で考えてがんばってるんだな」
と、思ったものでした。

2002年に、ダニエル・カーネマンが
ノーベル経済学賞を受賞したことで
知られるようになった行動経済学。


https://www.amazon.co.jp/dp/B0716S2Z29

今まであった経済学に心理学的要素を加えた
比較的新しい学問です。

「ファスト&スロー」
この中でカーネマンは、
人間の思考モードは
2つのシステムに分けて
考えられると言います。

システム1:無意識に行動、判断する仕組み
身体が勝手に動くので、スピードが速く
同時に複数のことを処理できます。
いわゆる「直感」と言われるものです。
無意識ですから、脳はあまり疲れません。

システム2:意識的に行動、判断する仕組み
状況を理解したり、何かを考えたり判断したり。
ただ、同時に複数の作業を行うことはできません。
理性的に判断しようとするので、脳を使います。
疲労感や負担感があります。

部長も疲れて思わず本音を
言いたかったんですね。

ここに二本の線があります。

上も下も線の長さは同じに書きましたが
書いた私自身が見ても、
下の線の方が長く見えます。

カーネマンが「システム」と表現するのは、
こうした抗えない強固な「認知」のことを
言っています。

この「認知」に、ゆがみや傾向と
言われるバイアスがかかることから、
時として人は不合理な判断をしてしまいます。

私の例でいうと、
ジムに通っている関係で、
食べたもののカロリーや糖質などを
毎食記録しています。

摂取カロリー、糖質、炭水化物など
上限の数値を設定しています。
そうすると、2週間程度経つと、
むしょうに甘いものや油ものが
食べたくなって、ドカ食いを
してしまいます。

これは普段、食べすぎないように、
食事制限するという、システム2
使っているのが、あるとき
どうしてもドカ食いという
システム1の発動を抑えられない
というものです。

体重を1キロ減らすのは大変ですが
1キロ増やすのはたった1日です。

これがわかっていても、やってしまう。

これもまた、システム1の発動を
抗えないということでもあったわけです。

食べ物つながりでいうと
テレビ東京で放送している“孤独のグルメ”

https://www.tv-tokyo.co.jp/kodokunogurume/

このドラマは導入部分で主人公の
仕事の打合せシーンがあって、
そこでの商談相手との緊張感や
振り回され具合への主人公の対処
これはシステム2。

一転して、商談が無事に終わり
ストレスから解放されたとたんに
空腹を感じて、今の気分に正直に
食べたいものをひたすら探して、
店に入るというのがお決まりのパターンです。
この店を探す姿は、まさにシステム1発動中
というわけです。

こちらまで食欲が出てきて、困ってしまいます。

ただ、 システム1が発動しても、
それをシステム2に受け渡して、
食べたらどうなるかを
論理的に考えさせて判断して、
食欲を抑えています。

システム1で感じたことを
システム2で判断することに
慣れてくれば、
孤独のグルメを観ても
食べたい、とはならない
というわけです。

思わず本音を漏らした部長も
システム2を習慣化することで、
システム1でも
部下を認める、ねぎらう言葉を
発していけるように
支援していきたいと思います。

お読みいただき、ありがとうございました。

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