第369号
今月は毎週どこかの会社を訪問して
人事制度を作っています。
支援している会社のなかには
「公正・公平な人事制度を作りたいです」
そうおっしゃる会社もあります。
社長の多くがホントにそう思っているのと同時に、
それは無理だとも思っています。
社長は今までも自分の基準で評価し、
昇給・賞与を決めてきました。
そのプロセスの中で、葛藤し、悩みながら
決断してきました。
だから、自分の評価に自信を持っているか
というと、むしろ、「本当にこれでいいのだろうか?」
という自問自答だと言います。
だからこそ、社員のかたに
「もっと多いと思っていた、
上がると思っていたのに、
がっかりです」
と言われると、期待を裏切って
申し訳ないなぁと思うと同時に、
こちらの気もしらないで、と
怒りよりも、深いため息を
ついてしまいそうです。
これが立場の違いによるギャップです。
確かに人と人は違います。
伝えたからといって伝わるとは限りません。
でも、わかろうとする努力は必要です。
無理だろうなぁと思いつつも
「社員が納得する決め方をしたいなぁ」
と社長は思うのです。
でもホントのホントは
「自分の決め方に、どうしたら納得してもらえるのだろう」
ということなのかもしれません。
じゃあ、公正、公平ってどういうことでしょうか。
Web辞書で見てみると
公正:かたよりがなく正当なこと
公平:えこひいきしないこと
そもそも、どんなに心を砕いて作っても
「この決め方は公正であり、公平だ」
と、社員さんが思わない限り、
その人事制度は公正・公平とは言えません。
どんなに社長が社員のことを考え、
真剣に作ったからといって、公正・公平な
人事制度になることはありません。
要するに、受け手側に判断は委ねられます。
人それぞれ、価値観が違います。
だからこそ、可視化が必要です。
事前の説明が不可避です。
そして、ビジョンを明確にして
人事制度で示そうと思う
価値観の共有化をはかることです。
成長支援会議を通じて、各上長が
その評価のものさしを合わせながら
評価し、それをフィードバックする。
これを数回繰り返すことで、
評価を経験していくなかで、
社員が人事制度に納得
していきます。
そのとき初めて、社員にとって
公正、公平な人事制度となります。
少し前、東大の入学式の
上野千鶴子名誉教授の祝辞が
ネットを賑わしていました。
ひとりでいるだけで「おさみしいでしょう」と
言われるのを、大きなお世話だ、と言いたいために
『おひとりさまの老後』を書いたという論客です。
祝辞の中で言った
「がんばってもそれが公正に報われない社会があなたたちを待っています。」
確かに社会全体を見渡せばそうかもしれませんが、
それでも、社会に出ても、がんばったら報われると
思える会社と出会うことが、奇跡ではないことを
示していきたいです。
お読みいただき、ありがとうございました。
このブログをメルマガでも
お届けしています。
ご希望の方は、
下記フォームよりご登録ください。